2010年10月20日

昭和40年代の胸キュン

昭和40年代の胸キュン

今日のコーデは、昭和40年代をテーマにしてみました。
もっとも、当時のグラビアを見ると、もっと襟元をきゅっと詰めて、コンパクトに、曲線的に着つけてますが…。
ちょっと民芸調のきものに、朱赤系の帯。昔はよく見たなぁ、という感じではないでしょうか。これは結城のように見えなくもないですが、もらいもののウールです。

昭和40年代。史上最高にきものが売れた時代。
そのことを思うと、私はちょっと、切なさを感じます。
1965年からの10年間が昭和40年代になるのですが、まず1964年には東京オリンピック、東海道新幹線の開通、70年の万博、66~70年のあいだ続いたいざなぎ景気。そして73年のオイルショックをうけ、74年にいわゆる高度成長期が終焉するまで、それが昭和40年代です。

問題は、みんながすでに洋服ですごしていた昭和40年代に、なぜ史上最高にきものが売れたか、ということです。誰が買ったのか、ということなんです。

買ったのは、団塊世代の親たち。青春時代や、若くて美しい時代が、戦争と重なってしまった人たちです。
戦争で、何もかも焼けてしまった。きものを食料と取り換えてしまった。きものをモンペに縫い直さなければいけなかった。そういうことが、非常に多かったそうですね。大切なものや、お気に入りのものも、たくさんあったことでしょう。
そういう経験をした人たちが、自分の娘が嫁ぐ時に、ひと通りきものを誂えたんですね。訪問着、色無地、小紋、夏冬喪服、普段着に紬も1枚、袋帯、名古屋帯、ついでに自分も1枚…。団塊世代は人数も多かったですから、それはそれはたくさんのきものが売れました。
戦後、ゼロから始めて20年。そりゃきものも誂えたくなりますよね。いや、そうだろうなぁと思うのです。でも経験のない若造が、この時代の人をひとくくりにして、こんなふうに言って片づけるのはあまりに軽いかもしれません。ごめんなさい。

しかしながら、さらに時間を進めると、このときの大量のきものが実は、大半が箪笥の肥やしになったということがあります。
40年代にきものを買った親世代は、普段着といえばきものだった時代に生まれ、親から、家庭内でその着方を教わった世代です。しかし買ってもらった娘世代は、普段着といえば洋服。何かの時にはきものを着ましたが、親に着せてもらえばよかったので、自分では着られなかった。だから、せっかく嫁入りに持たされたきものも、めったに出番がなかった。
これが現代のおばさまたちの「たくさん持ってるんだけどね~、着ないのよ」発言につながるわけなのです。そして、今や親世代がこの世を去り、自分のきものに加えて残されたきものまであり、これどうするってことで、リサイクル市場に流出すればまだいい方、タンスごと捨てられたり、あるいはせめてもの思いで洋服やバッグにリメイクしたり。

悲しいですねぇ…。
自分で着られたら、まだマシだったんじゃないかと思うんですよ。だって持ってるんだから、あとは着るだけだったわけじゃないですか。

でもね、~たら、とか言ってもしょうがないんですね。そういうこと言っても始まらないんです。
だから小梅は、とりあえず着付けの知識や技術なんかいらない、洋服屋の試着室でさっさと試着できるような、そういうきものを作りました。「着ないのよ」発言が結構な原動力なんですね、実は。

そういう私は、団塊ジュニア、孫世代。親に教われなかったので、着付け教室に行きました。でも着られるようになったんで、とりあえず箪笥の肥やしは日の目を見た!!それどころか、親戚中のきものが私のところへ集まって、もう大変なことになってますが…。
でも今ならまだ間に合うんですよ。40年代の、切ない胸キュン着物も、孫世代が着れば報われる。ついでにひ孫世代に着付けを仕込んでやれば、きものはもう大丈夫です。着方が親から子に教えられること、これがカギだと思ってます。

じゃあなんで小梅は着付けの知識がいらないきものなの、という疑問が湧いた方へ、お返事。
呼び水のつもりです。洋服から、いきなりきものへのハードルが越えられない人のために、そのはしごになるようなものを、と思って作りました。でもここから入った人で、本来のきものに目覚めていく人が必ずいる。やっぱりホンモノの方がいいわ、ってことになる人が、いるはずです。だから、小梅のきもので入学した人は、いつか卒業してほしいんです。

きものって、着たいけど着られないのよね~
        ↓
着付けの知識がいらないきもの?これなら着られそう…(小梅に入学)
        ↓
きものって楽しい!もっといろんなのないかな?
        ↓
××紬?○○織?わ~さすがホンモノはすごいわ~
        ↓
よし、ホンモノにチャレンジしてみよう!
        ↓
なんだ、着付けってそんなに難しくないのね。
        ↓
ウフフ、私も着たい時に着られるようになったわ!(小梅を卒業)

……とまぁ、これが私の思い描く、理想的な“きもの道”の歩み方ですね。というよりは、入口までの道のりですか。
私の仕事はあまりにもささやかですが…。でも多くの人が同じ目標に向かってささやかな仕事をすれば、それは大きな仕事になりますよね。そして実際に、多くの人が今、きもののこれからを案じたり、憂いたり、希望を持ったりしながら、いろんなことをしています。だから、私も絶望せず、ホソボソでもコツコツでも、まだしばらくこの仕事を続けますよ!



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Posted by 小梅店主 at 11:01│Comments(0)つぶやき
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