2009年05月08日

祖父の羽織

昨日のきものの管理のところで、大事なことを書き忘れてしまいました。
たとう紙の底に、厚紙が敷いてあることがあります。この厚紙が、一番湿気をためてしまうそうなんですよ!あれが入っていると、持ち運ぶときにクタクタしなくて便利なんですが、きもののためには外した方がよさそうです。いえ、ぜひ外しておいてください~~~、お願いします!! 直さないと着られないきものは、結局なかなか直さない=着ないものですから~~~。

さて、久しぶりにタンスの中身を点検していたら、こんなものが出てきました。

祖父の羽織

祖父の羽織です。
袖口はすりきれ、生地も弱っていて、もうほどいて直しても着ることはできそうにありません。でも肩にかけてみると、ふんわり柔らかく、軽くて暖かく、とろりとした感触が何とも言えない気持ちよさ。鏡に映してみると、時代劇に出てくる番頭さん風で、しばらく見入ってしまいました。

祖父は、私が8歳の誕生日に、64歳という若さで亡くなっています。物心ついたときは病気で体が不自由だったので、快活だったころの祖父を知りません。私の七五三に、大阪からはるばる東京まで来てくれたことが最もはっきりした祖父の記憶。でもあまりいろいろなことは覚えていないのです。

母に聞いた話。祖父は浜松の出身で、就職時に大阪に移ったこと。お酒もたばこもたしなまず、まじめで明るく、人がよかったこと。戦争のとき、サイパンで戦友を目の前で亡くしたこと。商社に勤めていて、50代で海外出張の報告をする会議中に脳溢血で倒れたこと、その後はリハビリの生活だったこと。サイパンに戦友の骨を拾いに行ったらもう死んでもいいと言っていて、本当に2度目の発作でその通りになってしまったこと…。

私は、大人になってから静岡に住むようになって初めて、祖父が浜松の出身だったことを意識するようになりました。そういえば、祖父の苗字は「鈴木」なのです。そういえば、祖父はとっても人が良かったのです。
そして、浜松の実家の家業は、捺染だったことを知ったとき、自分が呉服屋の娘でもないのにこうして木綿きものに関わる仕事をしていることや、見本市で何万という種類の生地を見ても、なぜか浜松や県西部産の生地が気になってしまうことに、合点がいったのです。そういうふうにDNAにプログラムが書き込まれてたんだな、と。

他にも祖母のものや、曾祖母のものなど、物語りのありすぎるきものや帯が続々と出てきてしまって、いっこうに作業がはかどらなかったというわけで……。みんな、生きていたら今でも聞きたいことがたくさんあるのにな……。

でも、こうしてモノだけでもいくつか残っているということは、子孫として幸せなことだとも思うのです。着ないからって処分したら、次の世代にはこの幸せを渡すことができませんものね。私が大柄なばっかりに、譲られても着られないものも多々ありますが、それでも処分はしません。子供や、親戚の子に無事にバトンタッチするまでは、預かっておこう、と思っています。「これはおばあちゃんの、そのまたおばあちゃんのきものだよ」なんて、言えたらすごいなぁ。「いらない」って言われたら、それまでなんですが!

羽織は、結局しまわずに出してあって、薄ら寒いときに着ています。男性の羽織は振りがなく(そでが胴に縫い付けてあるのでヒラヒラしない)、ドアノブに引っかけたりface07、お椀に浸かったりface08しなくていいですよ。下はGパンでも様になりますし。

うちにもあるなぁ、男性用の羽織、という方。ぜひ出してお召しになってみてはいかがですか?ウールのものなら洗濯機のドライモードで洗えますし、意外なよさに開眼されるかもしれませんよ!
もちろん女性用でもいいんですけどね。ものによっては華美すぎて洋服との釣り合いが取れないことがあるかもしれませんが、羽織り自体がややカジュアルな存在ですので、だいたいのものは大丈夫だと思われますicon22




にほんブログ村 着物・和装←もしよろしければポチっとお願いします!


同じカテゴリー(つぶやき)の記事画像
15周年ありがとうございます
Love&Kimono vol.12ご報告と、来年からのラブきも
エステと着物のコラボイベント。美へのこだわりにひれ伏す1日
Love&Kimonoご報告と、3月ですが新年の抱負
シルックについていろいろ考えてみた
ありがとうございました!LOVE&KIMONOご報告
同じカテゴリー(つぶやき)の記事
 15周年ありがとうございます (2023-05-17 01:18)
 Love&Kimono vol.12ご報告と、来年からのラブきも (2023-03-18 14:45)
 エステと着物のコラボイベント。美へのこだわりにひれ伏す1日 (2022-06-21 13:13)
 Love&Kimonoご報告と、3月ですが新年の抱負 (2022-03-16 15:21)
 シルックについていろいろ考えてみた (2022-03-07 15:26)
 ありがとうございました!LOVE&KIMONOご報告 (2021-03-17 11:31)

Posted by 小梅店主 at 09:15│Comments(2)つぶやき
この記事へのコメント
素敵なDNAですね。
私も、普段着きものを知り始めた頃”日本人”をとても感じて、嬉しく思った事がありました。(それまで、海外留学ばかり思っていたのに・・・)
最近は、出会いって偶然でなく必然なんだと思うこともシバシバ。
小梅さんとの出会いもきっと!!!
これからも、ずーっときものの灯を絶やさず行きたいですね♪
Posted by ごん太 at 2009年05月08日 13:14
ごん太さん、コメントありがとうございます。

何かに押されるようにしてこの仕事を始めて、何かが準備してくれたかのように適切な出会いが与えられて、不思議だなぁ、何だろう?と思っていたんです。
今は、祖父や、もっと前からのつながりが私にそうさせてるんだな、と考えるようにしています。そういうことにした方が、勇気が湧いてくるし、心も安らぐので。

これからも、私にできることを細々でも続けていきたいです。
またときどき覗きに来てくださいね!
Posted by 小梅店主 at 2009年05月08日 21:12
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
祖父の羽織
    コメント(2)